思考の回り道

2014.02.11

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20140211

私が秘書になって間もない頃の事です。
代議士に同行して、農林省に行きました。

 

公用車が到着すると、すでに次長と職員が玄関で出迎えていました。
応接間に通された代議士は、ゆっくりとソファにもたれました。

私は緊張のまま直立していましたが、職員の方が用意してくれた脇の椅子に腰掛けました。
お茶を出された後、しばらくして局長という方が、丁寧に挨拶をして前の席に。

 

この人は一か月前に着任して時、議員会館の事務所に、挨拶に来られた方でした。
こわばった表情の相手に代議士は、柔和な笑顔を向けながら、日頃の仕事ぶりをねぎらい
「いつもお世話になっています」と決して言葉を崩す事なく、局長の近況や彼の出身地の事等を話題にしていました。

 

時間にして、ほんの五分程度だったと思います。
その五分の間に、局長の表情は、すっかりリラックスしていました。
そして代議士は、その日の訪問内容を切り出したのです。

 

「局長、本日伺ったのは稲作の減反事情の中で、私どもは、ある取り組みの企画案があるんですよ。
今日は是非とも局長にお話を聞いて頂き、ご意見を伺いたいと思いましてね。」

 

そして待機している私に資料の提出を促しながら、話は進んで行きました。
その頃には局長も身を乗り出して、すっかり聞く態勢に入っていました。

 

私はこの一連の流れをまるで舞台を観ているように見つめていました。
速やかにスタートを切り、初めの5分で自らのシナリオの中に相手をキャスティングしていたのです。

 

この日の目的は、多額の予算を約束させる事だったと、帰りの車の中で聞かされました。
予算獲得の為に、局長を説得に行ったのです。

 

私は「説得」とは、如何に相手のハートとマインドを勝ち取るかという事だと学びました。

説き伏せるのではなく、win-winの関係。いわば相手をパートナーとして、納得できる状況を作り、
その相手が自らの意思で選択したと思ってもらえる事。これが本来の説得だという事です。

 

代議士は言いました。
「官僚は、仕事にプライドを持っている。だから、そのプライドを傷つけられる事を大いに嫌う。
その事はキチンと理解してかなければいけない。相手の人格を認め、仕事を評価したうえで、
こちらの存在を、どう認めさせ、受け入れてもらうかが、肝心なんだよ。これを思考の回り道と言うんだよ。」

 

これは、政治の交渉事だけのものではありません。
その後この教訓は、ビジネスシーンにおいても真実である事を幾多となく体験しました。

 

人の心をつかみ、行動させるには、どういうストーリーを綴ればいいのか。
力ずくで出させた応えは、いかに歪が出てくるのか。

 

このスキルは、対話をするうえで、とても大切なものです。

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